-探求-
考えてみれば、おかしい事だらけだ。
何故、高校3年の今の時期に転校してきて
そして、担任、学年の教師や生徒が それに触れないのか。
授業中、休み時間さえも、片時もそのノートを手放さない。
それ程までに その事について考えなければならないのか。
そして
別れ際の悲しげな顔
初対面の相手に、そんな顔はしないものだ。
つまり、「帰る」という事自体が、「悲しい」のではないか。
・・屋上の扉を開くと、昨日より少し涼しい風が吹いていた。
「やぁ、芦屋くん。」
「・・・また、お邪魔してもいいかな。」
「ふふ、君のように頭の良い人間なら、居ても何ら邪魔にならんさ。」
こちらを見ないので、表情こそ見えないが 心なしか喜んでいるようだった。
もうあんな顔は見たくないと、そう思った。
「・・そういえば君は、卒業したらどうするんだ?」
「・・実の所、あまり考えていない、今はこいつで手一杯でな・・。」
「・・そうか、それに関しては、協力してやれそうにないな。」
「あはは。」
彼女は急に手を止め、こちらに向き直った。
顔には、精一杯の笑みを浮かべて。
彼女が初めて 笑顔を見せた瞬間だった。
「やっぱり君は、思った通りの男だよ。」
「・・なんだよ、それ。」
「よく頭が回るし、何より優しい。 君、私が集中している時は話さないだろう。」
「・・俺が、そういうのされるの嫌いだからな。」
「それに、頭は君の方がいいはずだろう?」
「学校の試験や、目の前にある知識だけで 人の頭は測れないよ。」
「保存法則 だ。」
「元々ない物は、そこには生まれない、そのノートも、君の知識がなければ生まれないはずだ。」
「ほら、応用も利くじゃないか、つまり、そういう事だけどね。」
「でもこれは 失敗したんだ、つまり その程度の事しか書かれていないって事。」
「・・それでも尚、それに拘る理由は何だ?」
「・・そうだな、君は、今 それを知りたいだろう?」
「・・あぁ、そうだ。」
「私も同じだ、知りたかったから、それだけだ。」
茜色の光が、大学ノートのまだ白いページを照らす。
「知りたいなら、・・家に来ればいい、でも、知らなくていい事も、世の中にはある。」
「君と同じだ、それでも尚 知りたい。」
「わかった、家に招待しよう。」
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tag : 小説
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